my marenco

40数年来使い続けてきた、世代を越えたくつろぎの拠点

2007年に横浜市の山手地区に、
従妹の八木このみさんご夫妻の設計で建てた
3世帯住宅に移り住んだ、
料理研究家の山本真理さん。
新型コロナウイルスの流行以前は、
広々とした庭に面したこだわりのキッチンで
開催する料理教室が人気を博していましたが、
今は休止し、ゆったりとした毎日を送っていらっしゃいます。
そんな山本さんのリビングルームに
置かれているのは、
ご家族の歴史が詰まった
4人掛けのマレンコでした。

眩しい芝生の緑、周囲には巨大な木々。テラスにはハーブや野菜類が。山本さんのリビングは、そんな豊かな庭に面しています。この贅沢な風景を満喫できるのが、4人掛けのマレンコ。実はこのマレンコは、もともと山本さんの叔母にあたる料理研究家で、この家を設計した八木このみさんの母でもある有元葉子さんのご自宅にあったものでした。「叔母家族の家には娘が3人いて、うちの子どもたちも一緒に遊んでいましたから、マレンコはトランポリンのように扱われて、かなり酷使されていたように思います(笑)。その後、叔母が引っ越すことになり、何軒かでマレンコを分けることに。我が家にはアームのない部分が2つやってきました。当時は都内にいましたが、子どもたちはこの上や隙間でよく遊んでいました」と山本さんは振り返ります。

子どもたちの
遊具としての役割を経て
メンテナンスに

その後、都内で別の場所にお引っ越しされた際に片アーム付きの一脚を購入され、さらに2007年に現在の場所に移られた際に反対側に一脚を足されて、現在の4人掛けの姿に。「こちらに来てすぐの頃に、いい機会だからということでメンテナンスをお願いしたんです。真ん中の2つは既に購入から30年以上経っていて、しかも激しい使い方をされていたので、中のヌード生地が破れてウレタンフォームが出てきてしまっていました。古いカバーの上に新しいカバーをかけて使っていたほどでしたね。全部直したら、すっかり新品のような掛け心地に。私たち夫婦はここでちょっと横になったり、本を読んだり、テレビを見たり。隣に住む2人の孫もここで遊んでいます」。

階段下を生かした本棚も印象的なこの部屋には、山本さんのインテリアのこだわりが随所に見られます。「リビングテーブルの手前に並ぶプフはモロッコで作ってもらったもの。テレビ台にしているのは、以前から気に入って持っていた李朝の棚です」と山本さん。庭のサンキライをドライフラワーにしたものをペンダント照明と一緒に飾るなど、ディスプレイにもセンスが光ります。生成色のマレンコのカバーに合わせて、クッションには白やベージュなどの同系色をチョイス。「いろいろなカバーがあるから楽しもうと思うのですが、やっぱり生成色が今は一番落ち着くかな。以前はスタンプ入りカバーも使っていましたね」と山本さん。モダンな建物とさまざまな国からやってきた家具や小物を、柔らかな色がうまく繋いでいるようです。

引っ越しをしても使い続けられる
家具を選ぶ大切さ

以前は旅行に行くたびに現地の市場などでもの探しをするのが楽しみだったという山本さん。キッチンやリビングには、そんな旅で手にいれられたものが数多くディスプレイされています。「しばらくの間、主人の仕事の関係でインドネシアに住んでいたことがあるんです。その頃は特に、東南アジア各地の市場を訪れては、籠やキッチン道具などの掘り出し物を探していました。いつも手が切れそうなくらいの荷物を持って日本に帰ってきていたものです。今は旅行ができないので残念」とおっしゃる山本さん。とはいえ、お嬢様に言わせれば「ものが多すぎ」だそう。「食器も12客でセットにしているものを半分にしようと思ってはいるのですが、なかなか難しくて。娘に持っていっていいわよと言っているのですが、いつも断られてしまいます」と、笑いながら教えてくださいました。

教室の際にも活躍する広さを誇るキッチンは、八木さんが設計し、建具屋さんに頼んで作ってもらったという、木のカウンタートップが印象的。周りの家具とも、また庭の緑とも見事にマッチしています。使い込めば使い込むほど味わい深くなるものを好まれるのは、家具も同じ。「以前、家具デザインの仕事をしている友人に『家具はとりあえず選ぶのではなく、引っ越しをしても長く使い続けられるものを選んだほうがいい』と言われたことがあります。今の時代は使い捨てのようなものも多いですが、部品さえあれば使い続けられるものも多いはず。毎日使う家具や道具には、そういうものを選んできたつもりです。」そんな山本さんの美しい暮らしのメソッドが貫かれたこの部屋で、マレンコはこの先もご家族に寄り添っていくことでしょう。

取材・文/山下紫陽
撮影/橋本裕貴

山本真理

山本真理/やまもとまり
料理研究家

東京都生まれ。叔母でもある有元葉子氏の料理アシスタントを長く続けるかたわら、料理研究家としても雑誌・広告などで活躍。著書に『土鍋でおいしいご飯を食べよう』(講談社)。