my marenco

家族の歴史に寄り添い続ける、
幸せな同居人

女性建築家のチームオフィスとして、
主に住宅設計の分野で、
設計からインテリアコーディネートまでを
幅広く手がけるアトリエサラ。
2つある事務所のうちのひとつ、
大泉事務所は、
共同主宰者である
水越美枝子さんのご自宅も兼ねています。
水越さんが施主の方との
打ち合わせて使うことも多いという
2階の明るいリビングルームには、
長年愛用されている3人掛けのマレンコが。
住む人がいきいきと日々を送れる
家作りで知られる水越さんに、
暮らしの秘訣を伺いました。

2000年に現在のご自宅兼事務所を自らの設計で建てられた水越さん。当初より、リビングルームの中心はマレンコでした。「マレンコは学生時代からの憧れのソファでしたし、少しずつ増やしていけるのもいいなと思っていました。それで、1985年に結婚した時に購入したのです。最初は小さなマンション暮らしでしたから、2人掛けでした。その後、この家を建てた時に真ん中にひとつ追加したのですが、一緒に並べた時に、15年経っても両脇がヘタっていないのが驚きで。『マレンコにして良かったね』と話したものです」。

「私にとってマレンコは人生のパートナー的なソファ。カバーはかなりいろいろなものを持っていますが、やっぱり白系のものがしっくりくる気がします。カーテンなど合わせて替えたりできるのもいいですね」と水越さん。事務所を訪れた施主の方が「水越さんのお宅で見て素敵だったから」と、マレンコを購入されることも少なくないそうです。なんと、お嬢様がご結婚された時に水越さんがプレゼントされたのもマレンコだそう!

家族の思い出の家具を
今の暮らしに合わせて活用

水越さんのご自宅には、マレンコ以外にも長く愛用されている家具や小物が数多く置かれています。バンコクにいらした頃にアジア各地で購入された民芸品もあれば、ご両親から受け継がれた古い家具も。大きなエゴノキが生い茂る中庭に面した窓の前には、2人のお子様が使っていたというNTのキッズチェア、NUB(生産終了)の脚をカットしたものが並べられていました。「2人の子供の食事用の椅子として購入しましたが、成長に合わせて脚をカットして高さを変えてきました。大人の椅子と同じ高さになったので今でも座っています」と水越さん。ライフスタイルの変化に合わせて微調整しながら、同じものを大切に使い続けることの素晴らしさが、この家の随所から伝わってきます。

「絶対に散らからないこと」を
目指した美しい家

リビングルームの一角に置かれたCD棚は、お父様が小学校に上がる時に文机とともにお祖父様から贈られたという、大切な本棚。水越さんはこの本棚の取手を替えたり、CDの高さに合わせて棚板を入れたりして、使いやすいようにアレンジされています。「この家を建てた時に一番考えたのは収納のこと。絶対に散らからない家はどうやったら作れるかをこの家で実験し、それをお客様にも見ていただこうと思ったのです」という水越さん。マレンコの前に置かれたミャンマーの木箱の中にも、実は健康グッズが収納されているのだと教えてくださいました。

作り付け収納の上には、古い住宅の蔵にあった糸巻きや、タイやインドネシア、インド、韓国などへの旅行で購入したものが、完璧なバランスでディスプレイ。真ん中に置かれた木箱の中には、サッと掃除できるようにと、ウエスにするような布切れと鋏が入っているそうです。「1回片付くシステムを作ると、ずっと綺麗に住んでいけるもの」と水越さん。すっきりと片付いていながら、人肌の温かさに満ちたこの家で、マレンコはこれからも幸せな日々を送っていくに違いありません。

取材・文/山下紫陽
撮影/中田浩資

水越美枝子

水越美枝子/みずこしみえこ
一級建築士・キッチンスペシャリスト
一級建築士事務所
アトリエサラ 共同主宰

茨城県生まれ。日本女子大学住居学科卒業後、清水建設に入社。1991年よりタイ・バンコクにて住宅設計やインテリアデザインの仕事に携わる。帰国後の1998年にアトリエ・サラを共同主宰。著書も多く、最新刊に『理想の暮らしをかなえる50代からのリフォーム~動線と収納がゆとりを生み出す』(大和書房)。10月末に『がまんしない家~これからの生活様式への住まいリセット術』(NHK出版)発売予定。