my marenco

どんな空間にも合う、
ニュートラルな表情のソファ

生まれ育った東京・神楽坂を拠点に、
シェアハウスの建築・設計や内装デザインから
運営までをすべて行う
「SHARE」プロジェクトを展開している
クマタイチさん。
今年竣工した最新の物件
「SHAREtenjincho」に住み、
自転車で南青山の事務所との間を
行き来するクマさんは、
今回の引っ越しに合わせて
「マレンコ」を購入されたそう。
そんなクマさんにお話を伺いました。

神楽坂駅から徒歩5分の好立地にある「SHAREtenjincho」。9階建ての鉄筋コンクリート造の建物にある1部屋で、クマさんは今年の5月から新しい生活をスタートさせました。コンクリート打ち放しの部屋の一辺には、3人掛けの「マレンコ」がぴったりと収まっています。実はクマさん、マレンコを購入されたのは「スノーピークの山井梨沙さんのご自宅に遊びに行った時に素敵だな、と思ったから」。クマさんと山井さんは、スノーピークのトレーラーハウス「住箱」を使ったバー「TRAILER」の店舗プロデュースをクマさんが手がけたことがあるなど、公私にわたってお付き合いのある、親しい間柄。スタンプ有り麻カバーも、山井さんとお揃いです。

歴史や背景のある家具と
自然に同居

「新品を買うというよりは、歴史や背景のあるものを買うことが多いですね。ドイツで買った、ミュンヘン・オリンピック競技場などを設計したフライ・オットーの椅子とか。オットーは自然科学の研究成果を取り入れた素材や構造の開発で知られていますが、僕もドイツでそういう研究をしていたんです」とクマさんがおっしゃるように、部屋に置かれているのは年月を経た家具ばかり。その中にある、唯一の新しい家具がマレンコです。「ソファって空間に対して占める割合が結構大きいものだから、威圧感が必然的に出てしまう。それに対して、マレンコは“素”な感じ。座布団を集めたようなリラックスした感じが、絶妙にいいんです」と話してくださいました。

実はクマさんの部屋にはベッドも布団もありません。ということは、座るだけでなく、寝るのもこのマレンコで!「今のところはそうですね。この部屋はあまりベッドを置くという感じでもないな、と思って。僕は基本的にワンルームのような空間が好きで、いわゆるベッドルームみたいなものは好きではないんです。憧れはアーティストのドナルド・ジャッドが生前暮らしていた自宅兼スタジオのベッドルーム。ギャラリーのような空間の中に板を置き、その上に布団のようなマットレスを敷いただけのもので、それがめちゃくちゃかっこよくて」。ドイツのシュトゥットガルトでもニューヨークでもシェアハウスに住んでいたというクマさんだけに、暮らし方にも無駄がないようです。

コミュニティを作る装置としての
建築を目指して

明るく使いやすいキッチンや、集中できるワーキングスペースまで、暮らしやすさの工夫が随所に見られる「SHAREtenjincho」。なんと、自他ともに認めるサウナ好きのクマさんのこだわりが詰まったフィンランド式サウナまであります。「自分で設計したシェアハウスの運営まで行っているのは、ハードだけではなく、ソフトの部分を含めた建築、コミュニティを作る装置としての建築に興味があるから」とクマさん。「SHAREtenjincho」にシェアオフィスや飲食店(年内にオープン予定)も併設したのは、一人暮らしの人が集まるシェアハウスで生まれたコミュニティを、近隣の方や家族のいる方にも広げていくことを考えたからだそうです。

「シェアハウスを通して、東京の見えなくなってしまったコミュニティを再び可視化させたい」と「SHARE」プロジェクトを展開してこられたクマさんは、「今はいい人との出会いと場所さえあれば、どこでも仕事ができる時代。若い人たちもいろいろな場所で面白いことをしています。そういう場所を巡るのは楽しいですね」とも。クマさんご自身がどこかに移ることも十分考えられそうですが、“素”なマレンコなら、どんな場所にも無理なく寄り添ってくれるに違いありません。

取材・文/山下紫陽
撮影/名和真紀子

クマタイチ

クマタイチ/くまたいち
建築家・TAILAND代表

1985年東京都生まれ。東京理科大学卒業後、東京大学大学院修士課程を経て、2014年シュトゥットガルト大学マスターコース修了。2016年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。2017〜20年SHoP Architects(NY, USA)勤務。帰国後は隈研吾建築都市設計事務所勤務の傍ら、2021年より「建築におけるソフトとハードをつなぐ」をコンセプトに設計から管理・運営までを行う「TAILAND」を始動。