Cross Talk

室内景 / The Interior as Scene

Kanō Takero × noie.cc × arflex

狩野岳朗 CROSS TALK

上質な家具を通して心豊かなライフスタイルを提案するarflexと、額縁・額装店としての顔も持つnoie.cc(ノイエ キュレーション&クリエイション)による共創プロジェクト〈LIFE with ART project〉。企画を担当するnoie.ccの鷹箸 廉(たかのはし・れん)さんと、アルフレックスジャパンの村上 睦(むらかみ・むつみ)が、狩野岳朗さんの制作の原点や作品に込められた感覚をひもときながら、生活空間におけるアートのあり方について語り合いました。

― 狩野さんが絵を描き始めたきっかけは?

狩野:

公園で木を見ていたとき、枝の形がすごく不思議に思えたんです。「これって命の形なのかもしれない」と思って、描き始めました。

外で木を見て、帰ってきて部屋で描く。それを繰り返すうちに、だんだん自分の手のしわとか血管とか、地図とか、生き物が作り出す形が似ていることに気づいて、生きることって全部、つながってるんだという感覚になって、それでだんだん今の絵のようになっていきました。

僕は絵の勉強をしたわけでもないし、ただ自分の部屋に飾る絵として描いていたので、最初の個展の話をもらったとき、迷ってタイトルを「部屋絵」にしたんです。部屋の絵を描いているわけではないんですが(笑)

noie 鷹箸:

狩野さんの作品を初めて拝見したとき、「部屋絵」という背景があるって全然知らなかったんです(笑)ただ、この作品が家の中にあったらほっとするだろうな、暮らしに寄り添う作品だな、と感じて純粋にすごく好きになっていって。

その後「部屋絵」のお話を聞いて、これはLIFE with ART projectで企画するべき作家なのではと思って、ぜひ展示していただけないかと口説きました。

arflex 村上:

言われてみれば木に見えなくもないし、でもそれだけじゃない。曖昧さというか、押しつけのなさが魅力ですよね。穏やかな色調ともあいまって、作家さんにこんなこと言うのは失礼なんですが「すごく良いし、arflexっぽい!」と、第一印象で感じました。

狩野岳朗、鷹箸廉、村上睦 対談風景

「特別な日じゃなくて、
ごく普通の風景に絵がある」

― arflexでの展示は2回目ですが、通常のギャラリーとの違いは?

狩野:

2019年にarflexで個展『In the City』をやったとき「こんなにも作品の見え方が違うのか」って驚いたのを覚えています。ギャラリーでは作品にスポットライトが当たって、作品が主役になりますが、arflexでの展示は特別な日じゃなくて、ごく普通の風景に絵がある。

照明が絵の具の厚みに当たって影ができたり、自分でも知らなかった線が浮かび上がったりして。いわゆるホワイトキューブでの展示だと作品そのものを見ますけど、ここでは空間の一部として絵がある。それがすごくいいなと思いました。

鷹箸:

作品設営は狩野さんと一緒に「ここかな」「いや、こっちかも」って決めていくんですけど、全くルールはなくて、でも絵にとって心地の良い場所が必ずあって、不思議と意見がまとまるんですよね。

村上:

普段ショールームでアートを展示するときは、あらゆるお客様の視点で見て違和感がないようにしたいので、家具や壁との位置関係などはある程度基準を決めています。

でもLIFE with ART projectの企画は、ただ作品を見せるだけじゃなく、インテリアと調和させるだけでもなく、店内全部を使って世界観を表現したいなと。だから作家さん、noieさん、私たちが一緒になって作り上げている感覚ですね。

狩野:

すごくスムーズに設営が進むからびっくりしたんですが、多くの作品を見てきたnoieさんと、空間を知り尽くしたarflexさん、みんながちょうどいいと思う場所に作品を掛けるので、数値的な基準よりもフィットする場所を導き出せるのかもしれない。

arflex 室内景

「誰かが選んだ絵が、
その家の記憶として残っていく」

― 生活空間の中にアートがある良さを言語化すると?

狩野:

絵を描いてて「これって生きるのに必要な物じゃないかも」と思う時もあったんです。でも、人は古代の壁画からずっと絵を描いてきたし、その根源的な行為はきっとこの先もなくならない。だからこそ人の心を動かせる存在だとも思うんです。

なのでいまは、心のお供には絵が必要だと思っています。

鷹箸:

たとえば歯を磨きながらふと家の壁にかかった絵を見て「この絵、昨日と違う感じを受けるな」と思うとか。新たな作品を迎えたとき、家族と「どこに飾る?」って話すとか。アートは自分自身や周りの人との小さな対話を生む、コミュニケーションツールだなとも思います。

村上:

家具もそうかもしれないですけど、アートがあることでその風景が記憶に刻まれることってありますよね。家の中にある絵が、自分でも気づかないうちに家族と過ごした時間の象徴になったり。

狩野:

わかります。僕の実家のトイレに飾っていた絵があって、子どもの頃からずっと見てたんですが、大人になって「これって父が若いころ買ったのかな」ってふと思いを巡らせたりする。誰かが選んだ絵が、その家の記憶として残っていく。もしかしたら自分の絵も誰かの家にとってそういう存在になるのかもしれないと思うと、不思議な感じがします。

村上:

そういう絵には物質的な価値というより、感覚的に代えがたい良さがありますよね。だから時代や技術の進化に関わらず、アートは私たちになくてはならないものだと、私も思います。

鷹箸:

いまは昔よりもずっと、アートが身近になりましたよね。SNSの影響もあって、額装に来るお客さんも若い方が増えていて、それはすごくいい流れだなと思います。

狩野:

気軽になった分、作り手としては立ち止まって何が良いのか考えを巡らすのも重要な気がしてます。

狩野岳朗 作品を手にするインタビュー風景

「絵がある部屋全体の景色を
見てもらいたい」

― 今回の作品展『室内景』では、どんなところを味わってほしいですか?

狩野:

絵画で「室内画」は室内を描いた絵という意味だと思いますが、今回の展示では絵がある部屋全体の景色を見てもらいたいという想いで『室内景』にしました。

照明や自然光でできる影で絵が変化することや、そういった日常の風景が心や記憶を形作ってると思うので、どんな部屋に居たいか考えるきっかけになったらうれしいです。

鷹箸:

せっかくなので作品を見ながら「自分の家に飾るならどこだろう」とか「こんな飾り方もありなんだ」とか、自分と対話しながら想像して、ワクワクしてほしいですね。

村上:

そうですね。シーンごとに明るさも違うので、場所によって絵の表情が変化するのもおもしろいと思います。何かひとつでも、新しい楽しみ方や発見を持ち帰っていただければうれしいです。

Profile

狩野 岳朗 Kanō Takero

1975年群馬県生まれ、東京拠点。日常的に野外でスケッチを重ね、植物や空間、身体の感覚を丹念に観察することを制作の基盤としています。作品は一見抽象的でありながら、綿密な観察と構造への意識にもとづき、現実のモチーフを解体・再構築するプロセスから生まれます。色面と線が織りなす画面には、生命への深い感受性と、時間や記憶の層が重ねられています。身体的実感と理知的構築性を往還しながら、同時代における抽象表現の可能性を静かに拡張し続けています。

Exhibition

狩野岳朗 作品展
室内景 / The Interior as Scene

2026年5月28日(木) - 6月16日(火)
open 11:00 - 18:00 水曜・祝日定休
会場:アルフレックス大阪

詳細はこちら →